ライフスタイルフォーラム

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辻 信一さん (文化人類学者、環境運動家、明治学院大学教授)
この人にきく
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  • 辻 信一さん
  • 明治学院大学国際学部教授、「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表。環境=文化NGOナマケモノ倶楽部世話人。「スロー」を合言葉に環境=文化運動を進め、草の根からの場づくり、コンセプトの提案、執筆と、各方面での活躍が波紋を広げている。スロー、カフェスロー、ゆっくり堂などのビジネスにも取り組む。著書に『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)『スロー快楽主義宣言』(集英社)など。

 

ナマケモノ倶楽部やスロー・・ユニークな環境活動を多くなさっていますね。

今、ハチドリキャンペーン(※1)というものをやっています。テーマは「わたしにできること」。自分のライフスタイルを変えることが、世界をより良いものに変えるというメッセージです。例えば今晩、どこで、誰と、何をどう食べるのか、それが大事なんです。環境、環境と言っている人さえ、なかなか自分自身のライフスタイルを変えられていないというのが実情。ライフスタイルはその人の生き様です。

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「(研究室の窓から見える道路工事のための伐採跡地)見るたびに心が痛むんですよ」
 今、社会には無力感が溢れていますよね。社会そのものがシステムに人々を依存させて、無力にすることで成り立ってしまっているんです。世界の中でも日本は飛びぬけて無力感が溢れていますよ。システムへの依存度がとても高い、問題の根は深い。でもね、ヒントはたくさんあるわけですよ。依存から抜け出すきっかけを一度つかむとあとはすいすいできちゃう。引き算は快楽ですよ。子どもだとなおさらそうです。ちょっとしたことができたときに感じるパワーってものすごい。これがエンパワーメントです。「あ・・なしでも平気なんだ。これだけで生きていける・・・。」そんなプロセスだと思う。引き算をやっていくと、パワーがでて楽しくなる。依存するというのは実は本来、自分を支えてくれるはずのつながりが壊れていたり、切れているということだから、逆につながることが楽しいんだということが見えてくる。日本の伝統社会では人々が高い能力をもって快楽を自ら作り出していたんです。

「自立」、これも誤解の多い言葉で、自立っていうと一人で生きていけることみたいに思うけど、そうじゃない、そんな人間は一人もいないわけで。助け合うことができる、これはすごいこと。依存とは違うんです。助けられ助け合う、お互いの役割を果たしながら。大きなシステムやモノや機械、大企業に頼らず生きていくこと。こっちのほうが楽しいぞ、と言いたい。

Image ハチドリ計画は大テーマです。これは2008(ハチ)年までかけてやろうと思っています。その中に参加するそれぞれの団体が自分たちのテーマに引き寄せて、例えば「地球温暖化のために私たちにできることはなに?」「戦争をなくすために私たちにできることはなに?」とかそれぞれ考えて具体的な提案をしていけばいい。ナマケモノ倶楽部(辻さんはNGOナマケモノ倶楽部の代表世話人)はナマケモノ倶楽部らしいキャンペーンをやりたい。引き算ですよ。大量生産、大量消費、大量廃棄を「ナマケる」んです。


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ハチドリの最後を読んで、悲しくなったんですよ、日本のNGOみたいだなって。

そういう人もいるわけ(笑)。でもね、この物語の後、想像ができるじゃないですか。もしかしたら、大きなゾウが鼻をつかって一緒に火を消してくれたかもしれない。人間はハチドリや熊、ジャガーに比べたらずっと色んなことを考え、実際に行動に移すことができる動物なわけで、そんなふうに考えていくうちに力を発揮する。だから、民話がここで終わっているのはとても面白いと思う。これは結末のある完成した物語じゃなく、物語の始まりなんです。だからこそ、読む側の想像力を刺激するんじゃないか。だからこそ、みんなの励みになりうると思っています。

ハチドリ計画のきっかけは何だったのでしょう?

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  • 辻信一監修
  • ゆっくり堂発行
  • ハチドリ計画企画(一冊300円)

 

民話はエクアドルで先住民キチュアの友人たちにきいて知っていたんです。でもきっかけは、セヴァン・スズキ(※4)の「あなたが世界を変える日」という本の編集協力をした時、あとがきに子どもたちに向けて文を書いた時です。無力感に負けてしまいそうな時がくるかもしれない、そんな時にセヴァンのことを、ハチドリの話を思い出してほしいって。それが最初。だからセヴァンの存在を通してぼくのうちでハチドリがはばたき始めたといえるかもしれない。

実はセヴァンは親しい友人(デヴィット・スズキ)の娘でね、子どもの時から知っているんですよ。彼女はすごい女性です。子どもが潜在的にもっているものってすごいですよ。

話は変わりますが、夏には韓国へいらっしゃるそうですね。

Image そうそう、今度ピースボート(※2)が、韓国の環境団体と共催するクルーズに日本から韓国の間、5日ほど乗るんですよ。8月13日に出発するんですけど、8月15日に韓国にいるのは面白いだろうって思ってね。反日もあるしね。韓国で言うと、解放記念日ですよ。

ぼくの三つの本が韓国で出版されていて、結構話題になっている。

簡単なんです!彼らとつながっていくのはエコロジーしかない。政治的な話はもうつまらないですよ。東アジアを一つの生命共同体として捉え、一緒に生きていくしかないって考えてやっていけばいいんです。今度のピースボートは「グリーン&ピースボート」。環境と平和で結びつこうというのがテーマ。竹島はどっちのものなんて言っているけど、どっちのものでもないでしょ。あえて言えばそこに住んでいる魚や鳥たちのものです。もしも人間にあれこれ言う権利があるとしたら、どちらがよき管理者、後見人になれるかというのが基準言う事。そう考えていけばすっきりしますよ。いっそのこと、自然保護区にしてしまえばいいと思いますね。

韓国にね、鳥の民話があるんですよ。“ソッテー”というものなんですけど、ソウルに行けばたくさん売ってますよ、鳥の飾り物。僕のうちの玄関にも飾ってある。昔、朝鮮のシャーマンの家には長いさおの先に鳥の飾り物を置いた、これがソッテー。それはメッセンジャーで、天と地をつなぐものなんですね。シャーマンはその鳥を通じて天からのメッセージを受け取り、人間に伝える。ハチドリは南北米大陸におけるメッセンジャー。僕らは本来、動物、植物と交信する能力をもってるはずなんですよね。だからハチドリの神話にもそういうメッセージがこめられているのではないでしょうか。というわけで、これは韓国にも広がると思いますよ。

「わたしにできること」の等身大のお手本になる人がいましたら教えてください。

ワンガリ・マータイ(※3)さん。彼女のやっていることはとてもシンプルなんですよ。“私は木を植えました、そうしたら近所の人も木を植えはじめました、どんどん植えました”(笑)。そういう人がいいよね。彼女にハチドリの本を渡したらとても気にいってくれてね。今でもぼくのことをハチドリの先生と呼んで覚えていてくれます。

最後に。生活に欠かせないモノがあったら教えてください。

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「マイ箸(※5)もよく人にあげちゃうんですよ」
これです(写真の水筒)。これもう7年間使っているんですよ。よく人にもあげるんですけどね。僕はすでに7年間ペットボトル使ってませんよ。ですから、例えば1日2本のペットボトル飲むとすると、7年間で約5000本のペットボトルをセーブしたことになる。すごいでしょう。

ありがとうございました。
取材した日は七夕。途中、雷雨に見舞われ、雷の音に驚きながらの取材となりました。窓の外から見える風景は雑木林、その中にぽつんと「谷津」(田んぼ)がありました。「学生たちとね、あそこで農作業をするんですよ。」学生たちのこと、そして大好きなコーヒーのことを嬉しそうにお話する辻さんがとても印象的でした。

文と撮影:事務局

 

  • (※1)ハチドリキャンペーン
    ハチドリになろう!(南アメリカの先住民に伝わるハチドリの物語。ハチドリ計画は、ハチドリキャンペーンに参加する団体、個人ネットワークです。
    http://www.hachidori.jp/home.html
  • (※2)ピースボート
    「みんなが主役で船を出す」を合い言葉に集まった、好奇心と行動力いっぱいの若者達を中心に、アジアをはじめ地球の各地を訪れる国際交流の船旅を企画している非営利のNGO
    http://www.peaceboat.org/index_j.html
  • (※3)ワンガリ・マータイ
    ケニア環境副大臣。ケニアの乾燥地帯で植林運動「グリーンベルト・ムーブメント」のリーダーとして、2004年度のノーベル平和賞を受賞。
  • (※4)セヴァン・スズキ
    1979 年カナダ・バンクーバー生まれ。9歳のときにECO(Environmental Children Organization)という小さなグループを立ち上げる。ブラジルのリオで行われた「地球サミット」でのセヴァンのスピーチはあまりにも有名。『あなたが世界を変える日』(学陽書房)『わたしと地球の約束』(大月書店)
  • (※5)ナマクラグッズ
    http://www.sloth.gr.jp/goods/others_hashi.html

 

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