| 辻 信一さん (文化人類学者、環境運動家、明治学院大学教授) |
| この人にきく | |
ナマケモノ倶楽部やスロー・・ユニークな環境活動を多くなさっていますね。 今、ハチドリキャンペーン(※1)というものをやっています。テーマは「わたしにできること」。自分のライフスタイルを変えることが、世界をより良いものに変えるというメッセージです。例えば今晩、どこで、誰と、何をどう食べるのか、それが大事なんです。環境、環境と言っている人さえ、なかなか自分自身のライフスタイルを変えられていないというのが実情。ライフスタイルはその人の生き様です。 ![]() 「(研究室の窓から見える道路工事のための伐採跡地)見るたびに心が痛むんですよ」 「自立」、これも誤解の多い言葉で、自立っていうと一人で生きていけることみたいに思うけど、そうじゃない、そんな人間は一人もいないわけで。助け合うことができる、これはすごいこと。依存とは違うんです。助けられ助け合う、お互いの役割を果たしながら。大きなシステムやモノや機械、大企業に頼らず生きていくこと。こっちのほうが楽しいぞ、と言いたい。
ハチドリの最後を読んで、悲しくなったんですよ、日本のNGOみたいだなって。 そういう人もいるわけ(笑)。でもね、この物語の後、想像ができるじゃないですか。もしかしたら、大きなゾウが鼻をつかって一緒に火を消してくれたかもしれない。人間はハチドリや熊、ジャガーに比べたらずっと色んなことを考え、実際に行動に移すことができる動物なわけで、そんなふうに考えていくうちに力を発揮する。だから、民話がここで終わっているのはとても面白いと思う。これは結末のある完成した物語じゃなく、物語の始まりなんです。だからこそ、読む側の想像力を刺激するんじゃないか。だからこそ、みんなの励みになりうると思っています。 ハチドリ計画のきっかけは何だったのでしょう?
民話はエクアドルで先住民キチュアの友人たちにきいて知っていたんです。でもきっかけは、セヴァン・スズキ(※4)の「あなたが世界を変える日」という本の編集協力をした時、あとがきに子どもたちに向けて文を書いた時です。無力感に負けてしまいそうな時がくるかもしれない、そんな時にセヴァンのことを、ハチドリの話を思い出してほしいって。それが最初。だからセヴァンの存在を通してぼくのうちでハチドリがはばたき始めたといえるかもしれない。 実はセヴァンは親しい友人(デヴィット・スズキ)の娘でね、子どもの時から知っているんですよ。彼女はすごい女性です。子どもが潜在的にもっているものってすごいですよ。 話は変わりますが、夏には韓国へいらっしゃるそうですね。
ぼくの三つの本が韓国で出版されていて、結構話題になっている。 簡単なんです!彼らとつながっていくのはエコロジーしかない。政治的な話はもうつまらないですよ。東アジアを一つの生命共同体として捉え、一緒に生きていくしかないって考えてやっていけばいいんです。今度のピースボートは「グリーン&ピースボート」。環境と平和で結びつこうというのがテーマ。竹島はどっちのものなんて言っているけど、どっちのものでもないでしょ。あえて言えばそこに住んでいる魚や鳥たちのものです。もしも人間にあれこれ言う権利があるとしたら、どちらがよき管理者、後見人になれるかというのが基準言う事。そう考えていけばすっきりしますよ。いっそのこと、自然保護区にしてしまえばいいと思いますね。 韓国にね、鳥の民話があるんですよ。“ソッテー”というものなんですけど、ソウルに行けばたくさん売ってますよ、鳥の飾り物。僕のうちの玄関にも飾ってある。昔、朝鮮のシャーマンの家には長いさおの先に鳥の飾り物を置いた、これがソッテー。それはメッセンジャーで、天と地をつなぐものなんですね。シャーマンはその鳥を通じて天からのメッセージを受け取り、人間に伝える。ハチドリは南北米大陸におけるメッセンジャー。僕らは本来、動物、植物と交信する能力をもってるはずなんですよね。だからハチドリの神話にもそういうメッセージがこめられているのではないでしょうか。というわけで、これは韓国にも広がると思いますよ。 「わたしにできること」の等身大のお手本になる人がいましたら教えてください。 ワンガリ・マータイ(※3)さん。彼女のやっていることはとてもシンプルなんですよ。“私は木を植えました、そうしたら近所の人も木を植えはじめました、どんどん植えました”(笑)。そういう人がいいよね。彼女にハチドリの本を渡したらとても気にいってくれてね。今でもぼくのことをハチドリの先生と呼んで覚えていてくれます。 最後に。生活に欠かせないモノがあったら教えてください。 ![]() 「マイ箸(※5)もよく人にあげちゃうんですよ」 ありがとうございました。
◆もっと知りたい
|
|


ハチドリ計画は大テーマです。これは2008(ハチ)年までかけてやろうと思っています。その中に参加するそれぞれの団体が自分たちのテーマに引き寄せて、例えば「地球温暖化のために私たちにできることはなに?」「戦争をなくすために私たちにできることはなに?」とかそれぞれ考えて具体的な提案をしていけばいい。ナマケモノ倶楽部(辻さんはNGOナマケモノ倶楽部の代表世話人)はナマケモノ倶楽部らしいキャンペーンをやりたい。引き算ですよ。大量生産、大量消費、大量廃棄を「ナマケる」んです。
そうそう、今度ピースボート(※2)が、韓国の環境団体と共催するクルーズに日本から韓国の間、5日ほど乗るんですよ。8月13日に出発するんですけど、8月15日に韓国にいるのは面白いだろうって思ってね。反日もあるしね。韓国で言うと、解放記念日ですよ。